本日の出荷は541ケース。
「眉毛繋がってるよ」
彼女の一言にハッとなり、鏡を覗き込む。
毎日見ている気になっていたが、しっかりと見るのはどれぐらい振りだろう。
久々に対面した自分は無精髭を携え、肌は荒れ、ボサボサ頭の酷く汚い顔だった。
そして、やはり眉毛は繋がっていた。
10年前、EDWINを履きこなすワイルドなブラピに憧れた少年の面影はそこにはなかった。
気がつけば、忙しいが口癖になっていた。
仕事さえ忙しくしていれば他の事はある程度置き去りにしても構わない。許される。
そう思っていた。
それが本心だろう。
しかし、それは10年前に憧れた『大人』の姿では無い。
まだ間に合う。
幼かった自分の理想を自分自身で壊す大人にだけはなっちゃいけない。
まずは床屋に行こう。
ズボンは勿論、EDWINだ。